私がラオウだった日
職場の同僚の奥様がご出産され、
高橋弥生の出産時はどうだったのか、
という話になりました。
うちの娘さんは予定日を過ぎても粘りに粘り、まったく出てくる気配なし。仕方がないのでバルーンという装置を子宮口に装着し、無理矢理広げる作戦に出ました。
バルーン処置が終わって1時間くらいすると陣痛が始まり、気がつくと陣痛室という分娩室のいっこまえの部屋で苦しむ自分。
同じ部屋に同じタイミングで陣痛に苦しむ妊婦が私を含め4人。みんなそれぞれ苦しみの表現方法が異なるので、横で聞いてるぶんには面白い。
死ぬー!死ぬー!と絶叫するタイプ。
腰をさする旦那にひたすら文句をぶちかますタイプ。ベッドや壁を蹴るタイプ。
私はといえば、ひたすら唸るタイプでした。一定の波で訪れては去る陣痛の痛みと共に、なぜか
「ヌゥゥゥゥ…ヌゥゥゥゥ…」
と繰り返すのみ。
もっと色々言えばよかった。というか、もう少し可愛らしい感じにすればよかった。でもその時はそんなこと考えられません。とにかく口から出てくるのは、ヌゥゥゥゥ…ヌゥゥゥゥ…
だけ。
そのうち、自分は実はラオウなのではないか。もしくは今、絶賛ラオウモードなのではないか、という幻想に陥るようになりました。そんなアホなことが浮かぶほど痛いということはご理解頂きたい。
自分はラオウ。自分はラオウ。
ひたすら念仏のように頭の中で繰り返すうち、入口近くの壁からこちらを覗くケンシロウの姿が見えるではありませんか。
ケンシロウ…
なぜ恥ずかしそうにこちらを覗くのだケンシロウ…
出産に関して色々あったはずなのに、今でも覚えているのは娘が出てきた瞬間ではなく、ケンシロウが恥ずかしそうにこちらを覗く顔だったりする。すまぬ、ぬたりよ…
今日は高橋弥生がラオウだったあの日をお送りしました。
ミドルネームはそうねぇ、ケンシロウでいいんじゃない?
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